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ペンローズの量子脳理論(5)
0   関東の国王      2020年2月13日 木 12:43
5「Orch OR」による意識のモデルの要約

私たちが提出しているモデルは、次のような内容を含んでいる。

(1)量子力学のさまざまな側面(たとえば量子的コヒーレンス)と、前に示唆したような自己収縮の過程(客観的収縮、「OR」)は意識において本質的な役割を果たしている。これらの過程は、脳のニューロンの中で、細胞骨格のマイクロチューブルをはじめとする構造の中で起こっている。

(2)マイクロチューブルを構成するチューブリンの構造は、内部の量子状態と関連している。そして、チューブリン同士が協同的に相互作用することによって、古典的および量子的な計算が行われている。前出の図4、5、6参照。

(3)量子的なコヒーレントな重ね合わせがチューブリンの間に起こる際には、環境からの熱的エネルギーと、生体分子からの生化学的エネルギーが関与する(このさい、フレーリッヒが提案したようなメカニズムが働いているかもしれない)。最近になって、蛋白質の中のコヒーレントな励起状態の証拠が報告されている。
されに、マイクロチューブルの表面付近の水分子は、ランダムではなく、ある秩序の下に、蛋白質の表面と相互作用していると考えられる。マイクロチューブルの中空の構造は、量子的な波の伝導管として働き、量子的にコヒーレントな光子を作り出すかもしれない(ちょうど、「超光放射」<super-radiance>や、「自己誘導透明化」<self-induced transparancy>の現象のように)。コヒーレントな状態は、周りの環境から隔離された形で、最大数百ミリ秒にわたって保たれる必要がある。このようなコヒーレントな状態は、

(a)マイクロチューブルの筒の中の中空
(b)チューブリンの疎水性のポケット
(c)コヒーレントに秩序づけられた水分子
(d)ゾルーゲル層

の中で起こる可能性がある。
ノイズにあふれ、混沌とした細胞内の環境で果たして量子的にコヒーレントな状態が維持できるのかという疑問があるだろう。この点については、生化学的なラディカルのペアが、細胞質内で分離した後も相関を保つという、肯定的なデータがある。

(4)前意識的なプロセスにおいては、コヒーレントな量子的重ね合わせとそれに基づく計算が、マイクロチューブル内のチューブリンで起こる。この重ね合わせの状態は、チューブリンの固有状態の間の質量分布の差が量子重力のしきい値に達するまで維持される。しきい値に達したとき、自己収縮(「OR」)が起こる。

(5)自己収縮(「OR」)の結果、マイクロチューブル内のチューブリンは、古典的に定義された状態へと落ち込む。「OR」に関するある種の理論によれば、結果として生ずる古典的な状態は、計算不可能である。つまり、これらの状態は、量子的計算の最初の状態から、アルゴリズムに基づいて決定することはできない。

(6)「OR」の結果、チューブリンがどのような状態になるかの確率は、チューブリンの初期状態や、量子的な振動を制御するマイクロチューブル関連蛋白質(MAPs)の状態によって決まる(前出図9)。このような理由で、私たちはマイクロチューブル内で自己調節しながら起こる「OR」のプロセスを、「調節された客観的収縮」、「Orch OR」と呼ぶのである。

(7)ペンローズによって提出された「OR」に関する議論によれば、重ね合わせられた状態は、それぞれが独自の時空構造の幾何学を持つことになる。コヒーレントな質量―エネルギー分布の違いが、十分に大きい時空の幾何学の分離をもたらしたときに、システムは単一の状態へと自己崩壊を起こす。こうして、「Orch OR」は、基本的な時空構造の幾何学における自己選択を含む(図10、11)。

(8)十分によく定義された質量分布を持つ二つの状態が重ね合わされた状態から「Orch OR」が起こるプロセスを定量的に評価するためには、二つの分布の間の差に対する重力的自己エネルギーEを求めればよい。ここから、重ね合わせられた状態が自己収縮するまでの寿命Tが、

T=h/2πE

という式で求められる。私たちは、Tを、重ね合わせがコヒーレントに維持される時間=「コヒーレンス時間」と呼ぶことにする。ここで、Tの大きさとして、T=500ミリ秒という値を採用してみよう。これは、リベットらによって、前意識的なプロセスを特徴づける時間とされてきた値である。この値からEを計算すると、コヒーレントな状態を500ミリ秒間保つために必要なチューブリンの数が推定できる。答えは、約109個のチューブリンということになる。

(9)典型的な脳のニューロンは、約107個のチューブリンを持っている。もし各ニューロンの中の、10%のチューブリンがコヒーレントな量子的重ね合わせに参加しているとすると、約103個のニューロンが、コヒーレントな状態を500ミリ秒保つために必要とされることになる。

(10)私たちは、一つ一つの自己組織化された「Orch OR」を、単一の意識的イベントとみなす。このようなイベントが次々と起こることによって、「意識の流れ」が形成される。もし、何らかの理由によって、生態が脅かされたり、興奮したとしよう。この時には、コヒーレントな量子的状態が速く現れ、たとえば、1010個のチューブリンが50ミリ秒以内に「Orch OR」を起こすと考えられる(前出図8)。もし、1011個のチューブリンが参加すれば、5ミリ秒で「Orch OR」が起こる。
たとえば、あなたの前に突然ベンガル虎が現れたとすると、1012個のチューブリンが、0.5ミリ秒以内に「Orch OR」を起こすことになるかもしれない。もちろん、より遅い時間経過をたどるコヒーレント状態もあるだろう。ちなみに、単一の電子は、自己収縮を起こすために、宇宙の年齢以上の時間を要する。

(11)量子的状態は、非局所的である。その理由は、量子的状態が、「巻き込み」(entanglement)、すなわち、EPR(Einstein-Podolsky-Rosen)パラドックスのような効果を起こしうるからだ。収縮の過程では、このような非局所的な状態が、一気に一つの状態に落ち込む。非局所的な収縮は、収縮を誘発する質量の移動が小さな領域で起こることによっても生ずるし、あるいは大きな領域にわたって均一に起こることによっても生ずる。個々の瞬間的な「Orch OR」のイベントは、空間的、時間的な広がりを持つ重ね合わせの自己エネルギーが、特定の瞬間にしきい値に達することによって生ずる。情報は、このような瞬間的なイベント(意識の中での心理的な「今」)に結びついて表現される。このような一連の「Orch OR」が、私たちにとってなじみの深い「意識の流れ」を形成し、また、一方向に進む時間の流れを形成する。
以上のような私たちの考察と、意識的な経験の時間的経過についての私たちの主観的な見方を比べることは面白いだろう。たとえば、仏教においては、意識が一つ一つ独立した、離散的なイベントのつながりであるという考え方がある。修養を積んだ瞑想者は、現実の経験において、「ちらちらする瞬間」を経験するという。仏教の経典は、意識を、「精神現象のある瞬間における集合」や、「明瞭な、お互いに独立した、永続しない瞬間が、生成したと同時に消滅する過程」として説明している。それぞれの意識的な瞬間は、次々と生成し、存在し、消滅する。その存在は瞬間的で、時間的な継続はない。なぜならば、点には長さがないからだ。私たちの通常の認識は、もちろん、連続的である。これは、ちょうど私たちが実際には不連続なフレームからできている映画を、連続的な流れとして認識するのと同じことなのだろう。いくつかの仏教の経典の中では、意識の瞬間の頻度について定量的な記述さえ見られる。たとえは、サルバースティバディンス(Sarvaastivaadins)は、24時間の間には6480000個の「瞬間」があると述べている。つまり、平均すると一つの瞬間は13.3ミリ秒だということだ。別の仏教の経典は、瞬間を、0.13ミリ秒だとしている。一方、ある中国仏教の伝統の中では、一つの「思念」が20ミリ秒続くとされている。このような記述は、瞬間の長さの変化も含めて、私たちが提案した「Orch OR」と矛盾しない。たとえば、13.3ミリ秒の前意識的瞬間は、4×104個のコヒーレントなチューブリンを巻き込んだ「Orch OR」対応し、0.13ミリ秒の瞬間ならば、4×1012個のチューブリン、20ミリ秒ならば2.5×1010のチューブリンのコヒーレントな状態に対応する。こうして、仏教的な「経験の瞬間」や、ホワイトヘッドの「経験の機会」、そして私たちの提案した「Orch OR」は、お互いに許容できるくらいの一致を見ていると言ってよいだろう。
まとめると、「Orch OR」のモデルは、次のような意識の重要な特徴を含んでいることになる。

(1)ニューロンの活動の制御
(2)前意識的状態から、意識的状態への遷移
(3)計算不可能性
(4)因果性
(5)さまざまな瞬間的および時間的重ね合わせが結び合わされて「現在」ができること
(6)経験が成立する基本的な時空の幾何学との結び付き
1   ewikftvorx      2020年9月1日 火 7:01
ヒント: 日本人は中国人とグリーンランド人との混血です
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